新築や塗り替えで外壁塗料を選択する際は、数ある塗料の中からどの製品を選ぶべきか迷ってしまう人も多いでしょう。外壁塗料は種類によって特徴が大きく異なるため、それぞれの耐用年数やメリット・デメリットをしっかりと把握したうえで検討することが重要です。今回は外壁塗料の種類や選び方について解説するため、ぜひ参考にしてください。
外壁塗装の塗料の耐用年数
外壁塗装のメンテナンスやリフォームを行うタイミングは、塗料の種類や耐用年数によっても異なります。新築時に耐久性が低い塗料を選択してしまうと、メンテナンスや補修により余計なコストがかさむ可能性もあるでしょう。ここでは、外壁塗装の塗料の耐用年数について詳しく解説します。外壁塗装のメンテナンス時期
外壁塗装のメンテナンス時期は、一般的に新築から10年程度であるといわれています。その理由は、住宅の外壁塗装に利用されることが多いウレタン系塗料の耐用年数が6〜10年程度、シリコン系塗料の耐用年数が8〜15年程度であるためです。外壁の経年劣化による症状には、紫外線による変色やチョーキング、カビ・コケなどが挙げられます。劣化が進行するとひび割れや剥離などが見られ、早急なメンテナンスが必要となります。
ひび割れや剥離などの重度の症状を放置していると、雨漏りが起こる・建物の内部が腐食するなどの深刻な被害につながる恐れもあるため注意が必要です。
塗料の種類による耐用年数の違い
外壁に使用される塗料には多様な種類があり、それぞれで特徴や耐用年数が異なります。基本的に、耐用年数が長い塗料ほど価格が高く、耐用年数が短い塗料は安く購入できる傾向があります。一般的な外壁塗料でもっとも耐用年数が短いのはアクリル塗料であり、耐用年数は約5〜8年です。ほかの塗料と比較すると早めのメンテナンスが必要となりますが、価格はもっとも安価です。
また、ウレタン塗料は約7〜10年、シリコン塗料は約10〜13年、ラジカル制御型塗料は約12〜15年、ナノテクノロジー塗料は約12〜20年が耐用年数の目安となります。耐用年数が上がれば価格も高くなるため、予算とのバランスを考慮しながら選ぶのがよいでしょう。
コストがかさんでもできるだけ長持ちする塗料を選択したい人は、さらに質の高い塗料を選択するのがおすすめです。ピュアアクリル塗料は約15〜18年、フッソ塗料は約15〜20年が耐用年数の目安です。
また、一般的な塗料の中でもっとも耐用年数が長いのは無機塗料であり、メンテナンス時期は新築から約20〜25年が目安となります。
外壁塗装の塗料の種類
先述の通り、外壁塗料にはさまざまな種類があり、それぞれで耐用年数や特徴が異なります。新築時に使用する塗料を選ぶ際は耐用年数とコストのバランスを考えつつ、それぞれの塗料の強みや特徴を理解したうえでニーズに合うものを選択することが重要です。
ここでは、外壁塗料の種類とそれぞれの塗料の強み・特徴などを詳しく解説します。
アクリル塗料
アクリル塗料は従来まで外壁塗装にもっとも利用されている塗料のひとつでしたが、近年では耐用年数が長い塗料が多数開発されたことから、使用頻度が少なくなっています。主成分はアクリル樹脂であり、費用相場は1平方メートルあたり1,000〜1,800円です。発色がよく光沢感があるため、自動車などの塗料として利用されることが多いです。耐用年数は5〜8年と短いため、さいきんでは建物の新築時や外壁メンテナンスにはほとんど利用されていません。
しかし、数年間のみ限定的に利用する建物であれば、コストを抑えて美しい発色を楽しめます。また、頻繁な塗り直しを前提としている場合にも向いているでしょう。
アクリル塗料のメリットには、カラーバリエーションが豊富であり、扱いやすい点が挙げられます。デメリットは、耐久性が低く頻繁なメンテナンスを必要とすること、水分と相性が悪い外壁材には使用できないことです。
ウレタン塗料
ウレタン塗料はウレタン樹脂を主成分とした外壁塗料であり、素材の柔軟性が高いことから外壁にしっかりと密着できるのが特徴です。費用相場は1平方メートルあたり1,800円〜2,500円となります。木材や金属などどのような素材にも使用できるため、通常の建物であれば塗る場所を選ばないのがメリットです。
環境次第である程度長持ちさせられるほか、複雑な外壁の形状でも対応できる万能さも魅力です。ただし、光沢感が強いため、マットな質感を希望する場合には向かないことに注意しましょう。
また、近年ではウレタン塗料よりも優れた塗料が同程度の価格で利用できることから、建物の新築や塗り替えにウレタン塗料が積極的に使われることは少なくなっています。
シリコン塗料
シリコン塗料は近年の外壁塗装において主流とされている塗料であり、外壁塗装の約7割で使用されているのが特徴です。費用は1平方メートルあたり2,500〜3,500円と比較的安価であり、耐用年数も10〜13年ほどとある程度長持ちすることから人気を集めています。外壁塗装を専門とする業者では、塗料選びに迷っているお客さんに対してシリコン塗料を勧めるケースも多く、費用と耐久性のバランスがよいのも魅力です。
また、人気の高さから商品ラインナップも豊富であり、生産管理についてのノウハウが蓄積されている点もメリットです。ただし、ラインナップが豊富であるがゆえに価格・性能の幅も広く、安価な商品は性能も低い可能性があるため注意しましょう。
ラジカル制御塗料
ラジカル制御型塗料は2010年代から発売が開始された新しい塗料であり、外壁の劣化によるチョーキングを防げる塗料として人気を集めています。主成分は高耐候酸化チタンや光安定剤であり、商品名はメーカーによっても異なります。また、ラジカル制御型塗料はあくまでベースとなる塗料にラジカル制御機能を持たせているという種類であり、ラジカル制御機能を持つシリコン塗料、ラジカル制御機能を持つフッ素塗料、といったジャンル分けであることを押さえておきましょう。
価格は1平方メートルあたり3,000〜4,000円ほどであり、通常のシリコン塗料と比較しても耐用年数が長く、コストパフォーマンスに優れている商品が多い傾向です。
大きなデメリットはとくにありませんが、比較的新しい塗料であるため現段階でも実績証明判断が必要であること、ベースとなっている塗料の性質により特性が異なることを頭に入れておきましょう。
ナノテクノロジー塗料
ナノテクノロジー塗料は水性塗料のひとつであり、アクリルシリコン樹脂が合成されている塗料です。ナノテクノロジー技術によって開発された低汚染塗料として知られており、通常の塗料よりも石油由来の原料がカットされていることから、環境にやさしいのが魅力です。価格は1平方メートルあたり2,500〜5,500円が目安となります。ナノテクノロジー塗料はシリカ粒子を内包していることにより汚れが入り込みにくいほか、防火性・防カビ性・親水性が高いこと、シックハウス対策に有効出ることなどがメリットです。
ただし、取り扱い業者が少ないこと、マットな仕上がりになるためツヤ感が欲しい人には向かないこと、鮮やかな色味には対応できないことなどに注意しましょう。
ピュアアクリル塗料
ピュアアクリル塗料はアクリル100%の塗料です。通常のアクリル塗料から不純物をすべて取り除くことで、高耐久・高性能を実現しています。価格は1平方メートルあたり3,800〜4,500円であり、フッ素塗料と並ぶ性能の高さを誇ります。ピュアアクリル塗料のメリットは、弾性が高く雨水の侵入を防止できることです。ひび割れが起こりやすい外壁素材と合わせることで、ひびを目立ちにくくする効果が期待できます。
一方で、弾性が高いことにより塗膜がゴムのような状態になるため、ほかの塗料と比較すると汚れが付着しやすい点がデメリットとして挙げられます。
フッ素塗料
フッ素塗料は外壁塗料の中でも高額な商品が多く、価格は1平方メートルあたり3,500〜5,000円です。耐用年数は15〜20年と非常に長く、ビルや集合住宅でも利用されています。公共施設にも多数施工実績があることから信頼性が高いこと、美しさが長続きするためメンテナンスの手間が省けることが魅力です。近年では一般住宅においても気軽に使用できるよう、価格を抑えた商品もラインナップされています。
デメリットには、再塗装が難しいこと、ヘアクラックが起こりやすいことが挙げられます。また、同程度の価格帯でさらに優れた塗料も発売されているため、費用と効果のバランスをしっかりと考慮して選択することが求められるでしょう。
無機塗料
無機塗料は主成分が無機物であり、雨や日光の影響を受けないのが特徴です。価格は1平方メートルあたり4,000〜5,000円と高額ですが、ほかの塗料と比較しても抜群の耐候性を誇ります。耐用年数は20〜25年と非常に長く、公共施設や海辺の工場などでも広く使用されています。ただし、ひとくちに無機塗料といっても塗膜が硬いものや弾性に優れたものなどのさまざまな種類があるため、外壁材との相性を考慮して商品を選択することが必要です。
最適な塗料を選ぼう!選び方のコツを解説
外壁塗装に使用する塗料を選ぶ際は、費用と耐用年数のほかにも考慮すべきポイントが複数あります。ここでは、外壁塗装の塗料を選ぶ際に注目すべきポイントや選び方のコツについて詳しく解説します。光沢の有無
外壁の塗料を選ぶ際は、塗料のカラーを重視する人が多いでしょう。しかし、同じ色味でも光沢の有無によって見た目の印象が大きく異なるため、カラーと合わせて質感についても検討することが重要です。一般的に、塗料のツヤ感は5段階に分けられています。光沢・ツヤが強いものははっきりとしたゴージャスな印象を、光沢がなくマットなものはシックで洗練された印象を演出できます。
外壁素材との相性
外壁の塗料は、塗布する外壁の素材によっても適した種類が異なるため注意が必要です。たとえばモルタルには弾性の高い塗料が、ALCには透湿性に優れた塗料が向いています。また、何度目の外壁塗装であるかによってもおすすめの塗料は異なるため、選定が難しい場合には信頼できる業者に相談するのがよいでしょう。